こんにちは!EOSで撮る風景写真 のブログを運営しているfujiです。
第32回となる林忠彦賞は奥山淳志さんの『BENZO ESQUISSES 1920-2012』という作品が受賞されました。
山口県での展示最終日となるこの日、受賞記念写真展へ足を運んでみました。
林忠彦賞
山口県出身の林忠彦さんは昭和を代表する写真家の一人です。
戦後日本の風景やポートレート写真を撮られた方で、『東海道』や『カストリ時代』等の代表作があります。箱根の杉並木や太宰治、川端康成などの作品を目にされた方は多いと思います。
林忠彦賞は、林忠彦さんの出身地である徳山市(当時)と徳山市文化振興財団(当時)によってアマチュア写真家振興の目的で1991年(平成3年)に創設された賞です。
奥山淳志さん
奥山淳志さんは東京で出版社に勤務された後、岩手県に移住されてドキュメンタリー系の写真を中心に活動されている写真家です。
奥山さんは25歳のときに、北海道の大自然の中で自給自足で暮らす井上弁造さんと出会われたそうです。
弁造さんの暮らしぶりや生き方に触れたのをキッカケに交流が始まり、弁造さんが亡くなられるまで弁造さんの暮らしの様子やポートレートを撮影されています。
奥山淳志『BENZO ESQUISSES 1920-2012』
絵描きを志しながらも夢を実現できなかった弁造さんに寄り添い、習作(ESQUISSE)の絵に植物や影の映ったもの、庭、そして弁造さんを撮影された写真が印象的でした。
チラシを見た時は写真展なのに何故「絵」が載っているのだろうと思いましたが、展示会場で作品群を拝見して、その疑問が解けました。また、写真という表現手段で絵描きを志した人の暮らしの様子やそのESQUISSEを表現されていることの意味を感じることが出来ました。
作品を見終わる頃に、弁造さんは絵を完成させずESQUISSEに留めたのかという意味を感じることが出来ました。そして、画家にはなれなかった弁造さんの作品が、奥山さんの写真作品として展示されていることで多くの人の目に触れることが出来たという事実を目のあたりにして、作者の表現したかったことを垣間見ることが出来たように思います。
奥山さんの長年に渡る取材を通じて編まれた素敵な作品群を拝見し、表現の奥深さに感銘を受けました。
奥山さんが交流を始めた時、今回のような展示まで思い描いていらしたかどうかは分かりませんが、写真の「テーマ」ということを考え始めた自分にとって非常に刺激を受けることが出来た展示でした。
井上弁造さんの絵の模写
今回の作品群の中心となる写真は、弁造さんの描かれたESQUISSEの模写になります。
単なる模写ではなく、弁造さんが暮らしていた庭の植物を重ねられたり、庭の光と影を活かされた作品が展示されており、弁造さんと奥山さんが力を合わせて作られた素敵な作品だと感じました。
井上弁造さんの庭
会場には弁造さんが暮らしていた庭の写真も展示されていました。
フレアやゴーストを活かされた描写が、今回の展示内容にマッチしていてとても素敵でした。
井上弁造さんのポートレート
何点か、弁造さんが絵を描かれている姿などの写真や優しい表情のポートレート作品も展示されていました。
長い年月に渡り、一人の人と向き合い信頼関係を築いたからこそ撮れる作品と感じました。
まとめ
第32回林忠彦賞を受賞された奥山淳志さんの写真展『BENZO ESQUISSES 1920-2012』へ足を運んびました。
奥山さんの長年に渡る取材を通じて編まれた素敵な作品群を拝見し、表現の奥深さに感銘を受けました。
※なお、展示会場は作品を含めて撮影およびSNS投稿がOKとのことでした。